2006年06月11日

手紙(東野 圭吾 著)

「弟だけはどうしても大学に入れてやりたかった」
そんな動機から老女の家に盗みに入り、はずみで殺してしまった兄・剛志。
裁判の結果は懲役15年。それ以来獄中から毎月、弟・直貴の元に手紙が届く。

直貴は、「自分のせいで兄が犯罪者になってしまった」と苦しむが、
強盗殺人犯の兄の存在によって、生活のために大学進学をあきらめ、
せっかくできた恋人とは別れさせられ、ミュージシャンとしての夢は消え去り、
就職しても異動させられ、しだいに兄からの手紙は無視されていく。

苦労を分かち合える伴侶を得て、子宝にも恵まれた直貴は、
自らの家族を守るため、悲しい決断をする。

罪を償うということはこのような思いをすることなのか・・・。

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「秘密」「さまよう刃」「白夜行」などの作品で知られ、「容疑者Xの献身」
第134回(2005年下半期)の直木賞を受賞した東野圭吾の作品。
毎日新聞日曜版に2001年7月から2002年10月まで連載された。

強盗殺人犯の兄を持つために、周りの人間からいわれのない差別を受け、
進学・恋・夢・仕事と苦汁をなめ続ける弟・直貴の生きざまを通して、
犯罪の結果は犯罪加害者だけでなく、その家族にも影響を及ぼすことを描く。

自分自身は何もしていないにもかかわらず、周りの人間から差別を受ける。
本を読んでいる限りでは直貴に同情したいのだが、実際に自分の周りに
直貴がいたとき、差別しないで付き合うことができるのか自信はない。
TVドラマの常套手段のように、直貴につらくあたるキャラがいないために
そいつを憎むことで直貴側に立つこともできず、とても心苦しい。

現実社会でも加害者の家族にはこれと近いような差別がされているのだろう。
皆が面と向かって非難するわけではないが、当たり障りのない会話しかせず、
自然に距離を置くように振舞う。
みんな自分と自分の家族を守らなきゃいけないんだし、家族には何の責任も
ないというのはわかっていても、これは仕方のないことなんだろうな。
差別をなくせと口で言うのは簡単だが、現実はそう簡単ではない。

犯罪者の家族についての差別なんて今まで考えたこともなかったが、
刑罰は自分だけでなく、結果的には家族にも累が及ぶことを肝に命じるべきだ。
小中学校の授業とかで教えればいいんじゃないのかな?
若年層の万引き、カツアゲ、バイク泥棒なんてのが減るんじゃないかな。
ま、どのみち実名報道されないんだから抑止力もクソもないか・・・。

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2006年10月、待望の文庫化。


2006年11月、山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカが出演の映画が公開。


映画の挿入歌は、明治生命の名CMにも使われたあの名曲「言葉にできない」。



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3 犯罪者を身内にもった苦悩はよく書けているが
5 久々に号泣しました


2006年10月、ようやく待望の文庫化がされました。
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東野 圭吾
文藝春秋

mano_oil at 16:06│Comments(1)TrackBack(2)東野 圭吾 

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1. 行間の宇宙  [ eゆめねっと ]   2006年12月04日 12:04
こんにちは。晴読雨読:手紙(東野 圭吾 著) - livedoor Blog(ブログ)を興味深く読ませていただきました。東野圭吾さん、いいですね。
2. 手紙/東野 圭吾  [ 書評ぽーたる ]   2006年12月08日 04:00
内容(「BOOK」データベースより) 強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く…。しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる苛酷な現実。人の絆とは何か。....

この記事へのコメント

1. Posted by 涼微   2006年12月08日 04:16
こんばんは!
内容が面白かったので、無名ブログながら、記事掲載させていただきますm(__)m

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