2006年11月30日

13階段(高野 和明 著)

因縁をつけてきた男を突き飛ばして死なせてしまったため、
傷害致死の罪で懲役2年の実刑を課せられた青年、三上純一。
仮釈放が認められ刑務所を出た純一に、刑務官・南郷が仕事の誘いをしてきた。
「人助けを手伝ってくれないか?死刑囚の冤罪を晴らすという仕事なんだ。」と。

2人が助けようとしている死刑囚・樹原亮は、事件当夜に起こったバイク事故の
後遺症のため、犯行時刻の前後数時間の記憶を失っていた。
彼の所持品の中に被害者の財布があったこと、着衣から被害者の血液が検出された
ことにより、本人も記憶がないまま死刑の確定判決が下されてしまったのだ。

彼を救う唯一の手掛かりは、事件から10年も経った最近になって
彼がようやく思い出したうっすらとした記憶のみだった。
あの時自分は死の恐怖に駆られながら、階段を上っていたと。

死刑執行への時間は刻一刻と近づいてきていた。残された時間はあとわずかだ。
彼ら2人は、死刑台への階段を上り始めたこの若者を救うことができるのか?

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かの宮部みゆきに「手強い商売仇を送り出してしまったものです」とまで絶賛され、
第47回(2001年)江戸川乱歩賞を受賞した高野和明の作品です。
2003年には反町隆史と山崎努を主演に迎え、長澤雅彦監督による
映画版が製作されました。

傷害致死の罪で服役し仮釈放中の純一は、世話になった刑務官の南郷に誘われ
弁護士事務所の依頼による重要な仕事を手伝うことになります。
その仕事とは、死刑囚の冤罪を晴らすための証拠を見つけること。

死刑執行の経験という苦悩を払拭するため死刑囚の冤罪を晴らしたい南郷と、
自らの罪のために経済的苦境に立った両親のために成功報酬が欲しい純一が、
協力し合って、真犯人を見つけるための証拠を探し求めていきます。

今年読んだ本の中では、東野圭吾「さまよう刃」と1位・2位を争う作品でした。
通勤時間帯に電車の中で読んでいたのですが、少しでも先に進みたいと思うあまり
夢中になって電車を乗り過ごしてしまったり、キリが悪い箇所で駅に着いてしまい、
家までの道を街灯の明かりで読みながら帰ったり(危ないなあ)してしまうほど、
ツボにはまった作品でした。

話のところどころに、伏線になるヒントが埋め込まれています。
普段ミステリーを読みなれている読者であれば、見逃すことはないでしょう。
この伏線を読んで自分なりの推理をし、結末を予想していくのが
ミステリーを読む醍醐味なわけですが、今回ことごとく読み間違いをしてしまい、
自分の想像するのとはまったく違う結末に唖然としてしまいました。
伏線に別の解釈ができるような罠をしかけていた作者の手法に
まんまとダマされてしまったわけです。

読み終わったその場で即、もう1度初めから読み返し始めました。
結末がわかった状態で読み返してみると、ここがポイントと思った箇所で
ことごとく違う解釈をしていたことがわかり、面白いやら腹が立つやら。
ま、ミステリーがすべて自分の読み通りで結末を迎えたら、
それは本当にガックリですけどね。
いい意味でダマされるために読むわけですから。

ミステリーとしても一級品ですが、社会派小説としての役割も担っており、
人が人を処刑するという死刑執行についての疑問や、量刑や恩赦の問題点、
また、最近映画が公開された東野圭吾「手紙」でもテーマになった、
犯罪加害者の家族に降りかかる苦悩も丁寧に描かれていて、
本当にすべての人におすすめしたい本です。ぜひご覧ください。


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2 緊迫感が・・・

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1. 13階段  [ 1-kakaku.com ]   2007年01月10日 21:15
傷害致死罪による3年の刑を終えて出所してきた三上純一(反町隆史)は、刑務官・南郷正二(山崎努)に誘われて、10年前に起きた殺人事件で死刑判決を受けた樹原(宮藤官九郎)の冤罪を証明すべく、事件の起きた千葉の町へ調査に赴くことに…。<br> 高野和明のミステリ...

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