2007年08月24日

ラリーバカ一代(篠塚 建次郎 著)

僕は大学を卒業してからほぼ30年間、三菱自動車のサラリーマンだった。
ドライバーとして三菱の車に乗って、パリ・ダカールラリーやWRCを戦い、
日本人として初めて優勝を成し遂げた。僕が乗っていた4WDのパジェロは、
ラリーでの活躍を契機に大ヒット車になり、世界中の自動車メーカーが
その後を追ってSUV市場という一大分野ができあがった。

それだけの実績がありながら、なぜ独立しないんだ?
サラリーマン時代、この質問を何度されたことだろう。

しかし、僕は知っていたのだ。
サラリーマンだからこそ、できることがあるのだと。
サラリーマンでひとつの仕事をがんばり抜けば、
文字通り「世界一」にだってなれるってことを。

世の元気をなくしたサラリーマンたちに贈る、トップドライバーからの応援歌。

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パリダカラリーと言ったらこの人、パジェロ使いの篠塚建次郎。
彼自身の半生記であるとともに、世のサラリーマンにこそ読んで欲しいという
応援歌になっている。

大学時代からラリーに参加して、ある程度名を知られた存在だった篠塚は、
卒業後三菱自動車に入社し、サラリーマンドライバーとしての活動を始めた。
セールスマンや整備の仕事をしながらラリーに出場し、
3年後には国内ラリーの頂点にまで登りつめてしまう。

その後海外に活躍の場を移すが、オイルショックなどの影響で、
1978年、三菱自動車自体のラリー活動が休止となり、社内失業状態に。
仕方なく企画や販売促進の仕事をしながら再参戦を待つ日々だった。

1982年、三菱自動車はオフロード車種のパジェロを発表。
もともと台数の売れる車ではなく、月に200〜300台しか売れなかった。
ちょうどその頃、三菱はラリー活動を再開。パジェロの人気を上げようと、
パリダカへの参戦を決める。しかし、ドライバーは彼ではなく外国人。

1985年、パジェロは総合優勝という栄誉を手にする。
しかし、日本での宣伝効果はほとんどなかった。それはなぜか?
それは、ドライバーが外国人だったから。日本人じゃないと注目されないのだ。
そして、とうとう篠塚に白羽の矢が立つ。

1986年、篠塚は8年ぶりにラリーに復帰することになった。
翌87年、篠塚とパジェロのコンビは総合3位という優秀な成績でフィニッシュ。
日本に凱旋すると、とんでもないことが起きていた。

それまで一企業の名を出すようなこともしなかったNHKが、
連日、三菱自動車のパジェロと篠塚のレースぶりを報道してくれていたのだ。
これによってパジェロの販売台数はぐんぐん伸びていき、あっという間に
月3000台ペースになってしまった。翌88年に総合2位になると、
売り上げはさらに伸び、ピークは月9000台にも達した。

パリダカ=パジェロ、パリダカ=篠塚建次郎というイメージが定着しつつある
今こそチャンスだ。篠塚は前々から考えていたことを社内で進言する。
パリダカを完走したパジェロと篠塚が全国のディーラーをくまなく回り、
販売に結びつけようという戦略だった。

これがまた大成功し、パジェロは売れに売れた。
パリダカ報告会というイベント自体がマスコミにとりあげられ、
PRをしてもらったからなのだ。

今までの活動を振り返ってみて、、自分はなぜ独立しなかったのだろうか。
たしかに、日本人としてはダントツの成績を上げていたし、他のチームからの
オファーに近いものも何度も受けた。でも自分は身にしみてわかっていたのだ。
この成績が「サラリーマンだったから達成できたのだ」ということを。

契約ドライバーだったら報酬は今の比ではなかっただろう。
しかし、三菱がラリーを休止したあの時、自分はどうなっていたかわからない。
サラリーマンだったからこそ、苦境の時期をやり過ごすことができたのだ。
社員だったからこそ、手作りの販促活動で、売れない車種だったパジェロを
オフロードカー市場の始祖となるような車種に育て上げることができたのだ。

いま、ベンチャー起業などがもてはやされ、サラリーマンはバカを見るという
風潮になっているようだ。でも本当にそうなのだろうか。
自分のやりたいことを会社が認めてくれる限りは、会社にいる方が絶対に
大きくて予算のかかることができるのは間違いない。会社の中で個の実力を
付けながら、自分の居場所や楽しさを見つけていくやり方だって、
十分有意義な人生の送り方だと思う。

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いやー、愛車がパジェロということもあって、当時からパリダカには
結構注目していたのですが、篠塚氏が三菱自動車の社員だったってのは
全然知りませんでした。三浦友和の義兄ってのは知ってましたが。

サラリーマンだからこそできることがある、それもとても重要で創造的な
ことなんだ、というのは正にその通りだと思いますね。
文句ばかり言ってないで、自分のできることを精一杯やることも重要です。
いい本にめぐりあえました。


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