2008年08月30日

ネットカフェ難民と貧困ニッポン(水島 宏明 著)

「ネットカフェ難民」。それは私が造った言葉だ。
生活が不安定で乏しい収入のためにアパートを借りることもできず、
1晩1,000円程度で過ごせるネットカフェで暮らす人たちがじわじわと増えている。

彼らに共通するもの。日本ではあまり語られることのなかった「貧困」。
明日への希望がなく、その日その日を生きるだけの生活。
人としての幸福な生活を奪われた姿。

取材してみると今の日本社会が置かれている「貧困」の諸問題が折り重なって
いるような人たちばかりだった。彼らの姿を通して、私たちが住んでいるこの日本が
今どんな状況になっているのか探っていきたい。

「ネットカフェ難民」の名付け親である、NNNドキュメントチーフディレクターが
語る貧困とネットカフェ難民の実態とは。

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「ネットカフェ難民」という言葉の生みの親である著者が、ドキュメント番組では
伝えきれなかったことを記したのが本書。実際にネットカフェを点々とする人たちへの
インタビューから構成されていて、その生々しい話に釘付けにされてしまった。

会社をクビになり、自分で会社を興すもうまくいかず多重債務者になってしまった男性、
常軌を逸した児童虐待からようやく逃げ出せたものの、弟妹のために母親に仕送りを
送り続け、消費者金融に借金をして転落してしまった男性、
中学卒業後、虐待する家族から逃げるように家を出て、ネットカフェ生活に
入ってしまった女性、
日雇い派遣だという理由だけでアパートを追い出され、ネットカフェ生活に
入ってしまった男性、
すべて社会のせいとは言わないが、すべて本人たちのせいなのだろうか?
自己責任という言葉でひとくくりにしてしまっていいものなのだろうか?

過酷な勤務で体や心の病気にかかってしまったり、リストラによって収入が途絶え、
家賃が支払えないために住まいを失ってしまうと、履歴書に住所を書けないため
次の仕事を見つけるのが難しい。
どうしても日雇い派遣のような仕事をせざるを得なくなってしまう。
それでもお金を貯めてなんとかアパートに入ろうと思って頑張っても
ネットカフェのリクライニングシートでしか寝られないので腰痛になってしまったり
病気になってしまったりして仕事を休み、また所持金が減ってしまう。
いつまでたってもネットカフェ生活から這い上がれないのだ。

働く気力があり、働く能力もある人たちが負のスパイラルから抜け出せないのは、
本人たちにとっても切実な問題であることはもちろんなのだけれど、
本来支払われるべき税金や、雇用保険・健康保険・年金などの社会保険料が
支払われないことで、受益者である国民全体が不利益を被ることになるのだ。
前に読んだ「ワーキングプア いくら働いても報われない時代が来る」とか、
本書のような素晴らしい書籍が出版されているのだから、社会保険政策に携わる人は
ぜひとも一読して今後の政策についてよくよく考えて欲しいと思う。


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5 あの衝撃的ドキュメンタリーの舞台裏
5 恐るべき派遣労働の実態とメカニズム

mano_oil at 01:57│Comments(0)TrackBack(0)ビジネス書 

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