2006年03月30日

殺人は容易だ(アガサ・クリスティー 著)

東洋の植民地駐在警察官だったルーク・フィッツウィリアムは、
引退し恩給も付いて、本国イギリスに帰ってきた。
ロンドンに向かう列車の中で、彼は親切そうな老婦人と同席したのだが、
格好の話し相手として捕まってしまった。

「私の住んでいる村で、殺人が行われているんですの。」
「殺人? それは、確かなんですか?」
「ええ、妄想ではないのです。1度ならともかく、何度ともなるとね。」
「すると、何度も起こったわけですね。殺人事件が・・・。」
「ええ。ですから、これからロンドン警視庁へ行って知らせるのです。」
「それは、ま、それがいいでしょうな。」
「次はドクター・ハンブルビーが危ないのです。止めなければ・・・。」
「しかし、何度も人殺しをしながら発覚しないのは難しいですよ。」
「いいえ、殺人はとても容易なのですよ。誰にも疑われなければね。」

老婦人の言うことを軽く聞き流して別れたルークだったが、
翌日の新聞は、彼女がひき逃げによって亡くなったことを伝えた。
そして1週間後、ドクター・ハンブルビーの死亡記事を見て、ルークは仰天する。

彼女の話は事実だったのか、それとも、ただの偶然の一致なのか。
警察に届ける段階ではないと考え、現地に向かって調査を開始した
ルークを待っていたのは、新たなる犠牲者の群れだった・・・。

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「そして誰もいなくなった」 「オリエント急行の殺人」が有名な、
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーの作品です。
原題は「Murder Is Easy」で、1939年に出版されました。

静かな村、ウィッチウッド・アンダー・アッシュで起こった連続殺人事件の謎を、
元警察官のルーク・フィッツウィリアムが「追いかけていきます。」
「解き明かしていきます。」と言えないところがミソ。
最有力な容疑者は二転三転し、彼は結果的にポアロ物やマープル物のように、
スマートに謎解きをすることはできませんでした。

誰もに動機がありそうで、誰もが疑わしい。
本当に連続殺人は起こったのか?老婦人のただの妄想だったのか?
しかし、ルークは亡くなった老婦人の台詞を思い出す。
「犯人は、誰も疑ってみようともしないような人なのです。」
そうだ、しまった、犯人は奴なのだ・・・。

クリスティー作品には珍しく、なんと途中で犯人がわかってしまいました。
今回はダマされなかった!ヤマカン?いえいえ、第六感ってやつですよ。


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