2008年09月03日

限界集落(梶井 照陰 著)

「限界集落」とは、65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、
独居老人世帯が増加したため集落の共同活動の機能が低下し、
社会的共同生活の維持が困難にある集落をいう。

国土交通省の調査では2006年4月の時点での限界集落は7,878箇所あり、
そのうち423集落は10年以内に消滅する恐れがあるという。

写真家である著者がそうした限界集落を丹念に回って撮影した写真と、
その集落に住む高齢者に聞いたエピソードを紹介する。
人口の都市への集中化により、日本の田舎が消えつつある。

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木材価格の低下により林業は衰退し、自由化による米価の下落や米の消費の減少で、
稲作で食べていこうにも実質、困難な状況にある。それに加え、少子化による
学校の統廃合や合併に伴う集落の周辺化など、さまざまな問題で限界集落が生まれ、
そして消えつつある。

限界集落といえども、そこに暮らす人たちが存在する。
著者は主に高齢者である住民にお話をうかがいながら写真を撮り、
集落周辺の山野などの写真も一緒に掲載している。

さすがプロが撮った写真ということで、とてもいい写真が多い。
素朴でいい表情をしたおじいさん、おばあさん。なかなか手入れも大変な古家。
見るからに人里離れているという山野など、いい写真だなあと見とれてしまう。

また、インタビュー中心の文章もとても読みやすい。著者は写真家である上に
文才もかなりあるようだ。平易な文章の中にもキラリと光る表現がいくつかあり、
それもまた限界集落の様子をよりわかりやすくするために一役買っている。

登場人物も著者も、そこの限界集落が消滅することについて安易に人のせいにしたり、
防ぐための方法論などを持ち出さないところがまたいい。
犯人探しをして糾弾するのが手っ取り早いし、おそらく売れ行きもいいだろうが、
そうしなかったことに良識を感じる。過疎化で不便なところから人がいなくなるのは
仕方のないことだし、それを防ごうとするとほかのところにとてつもないしわ寄せが
やってくるに違いないからだ。

この本、売れているのかなあ。こういう本こそ多くの人が読んで欲しいと思う。


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mano_oil at 01:08│Comments(0)TrackBack(0)ビジネス書 

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